精神と物質―分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか
- 2015/1/12
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精神と物質―分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか
立花 隆 (著), 利根川 進 (著)
本書は立花隆による利根川進への20時間にわたるインタビューの集大成である。利根川がノーベル生理学医学賞を単独で受賞したのは1987年。この分野では単独受賞だけでも珍しいが、選考委員のひとりが「100年に一度の大研究」というコメントを発したこともあり、受賞後、日本のジャーナリストが大挙して押しかけた。しかし、いずれも初歩的な質問に終始し、業を煮やした利根川は一度だけ本格的なインタビューに応じることにした。その相手が立花隆だったというわけだ。
とにかくおもしろい。ノーベル賞の対象となった研究「抗体の多様性生成の遺伝学的原理の解明」の内容がわかるだけでなく、さまざまな実験方法や遺伝子組み換え技術などのディテールが書き込まれているおかげで、仮説と検証を積み重ねて一歩一歩真理に近づいてゆくサイエンスの醍醐味が手に取るように伝わってくる。利根川が定説を覆す仮説をひとり確信し、文字通り世紀の大発見に至るくだりには思わず興奮してしまった。利根川の研究歴をなぞる構成で、運命的な出会いや科学者の生き方といった人間的な側面も興味深い。( Amazonより)
文庫: 333ページ
出版社: 文藝春秋 (1993/10)
ISBN-10: 4167330032
ISBN-13: 978-4167330033
発売日: 1993/10
至適透析的オススメ度:★★★★★(研究活動における心構えを学ぶことができました)
この本は、私の研究に対する姿勢を学ばせていただきました。
第4章:サイエンティストの頭脳とは
◆だから、ぼくは学生に「なるべく研究をやるな」とよくいっている。「何をやるかより、何をやらないかが大切なんだ」とよく言っている。一人の科学者の一生の研究時間なんてごく限られている。(中略)だから、自分はこれが本当に重要な事だと思う、これなら一生続けても悔いがないと思うことが見つかるまで研究をはじめるなといっているんです。
◆よく科学者にはオリジナリティがなければいけないというでしょう。もちろんその通りです。ところが、オリジナリティの意味を取り間違えている人がいるのです。大切なのはオリジナルでかつ重要度の高いことをやることです。どういう研究をすればより一般性がある法則の発見につながるかという判断が重要になるわけです。
◆サイエンスでは、自分自身がコンヴィンス(確信)するということが一番大切なんです。自分がコンヴィンスしていることなら、いつかみんなコンヴィンスさせられます。(中略)自分自身に何度も何度も、本当にそうなんだろうか、絶対に間違いないんだろうか、と問い直して、いやこれで間違いないと、時間をかけて、徹底的に問いつめた上でのコンヴィンスね、これができればいいわけです。
第5章:科学に「二度目の発見はない」
◆間違った予測のもとに、間違った力点が置かれた自県をやったとしてもね、実験結果として出てくるのは、いつでも客観的なファクトのわけですよ。間違った仮説のもとに実験をやっていれば、当然はじめのうちは予測と実験結果がずれてくるわけです。そういう場面にぶつかったときにどうするかで、正しい方向に戻れるか、どんどん間違った方向に深入りしてしまうかが分かれる。
利根川先生のようにノーベル賞を取るような研究はできませんが、臨床現場で直面してきた重要な課題に対して、根本的な解決を図る研究をすることを常に心がけるようにしています。また、作業仮説の重要性とその作業仮説と研究結果(ファクト)が異なる事に、なんらかの発見があるのではないか?と考えています。
このような考え方を持っていたからこそ、敗血症性ショックに対する High Flow CHDや脱血不良や再循環等で透析効率が低下した症例を抽出する透析量の質的管理法である CL-Gapを考案できたのではないかと思います。
目次
第1章 「安保反対」からノーベル賞へ
第2章 留学生時代
第3章 運命の分かれ目
第4章 サイエンティストの頭脳とは
第5章 科学に「二度目の発見」はない
第6章 サイエンスは肉体労働である
第7章 もうひとつの大発見
第8章 「生命の神秘」はどこまで解けるか
詳しくは Amazonのサイトをご覧ください。