2012年10月13日、14日と、名古屋で開催された第16回日本アクセス研究会に参加しました。
このアクセス研究会には、以下の3演題を発表しました。
・一般演題「タブレット端末を利用したVA管理システムの開発」
・一般演題「穿刺針の脱血特性推定式を用いたVA狭窄診断法の確立」
・ワークショップ「VA機能不全検出プログラムにおけるクリアランスギャップの有用性と課題」
まず、「タブレット端末を利用したVA管理システムの開発」の発表ですが、この発表は3期生の川口くんが卒業研究で進めてくれている研究テーマを発表しました。これまで、VA管理に関する情報管理システムは市販されているものがなく、各施設で紙ベースの記録用紙を使用したものやエクセル等に入力して管理するものが多かったのですが、この状態では各種タッフ間でのVA情報の共有は非常に難しいのが現状でした。この問題に対して、我々はタブレット型端末であるiPadにて使用できるデータベースソフト:FileMaker Proを用いてVA管理システムの開発を行いました。
実際のVA管理システムの作成は、必要な項目について話し合った上で、川口くんに開発をすべて任せました。最初のうちは、非常に大変そうでしたが、臨床工学科の宮崎先生にもいろいろ助けていただき、かなりいいシステムの構築が可能となっております。発表前には川崎医科大学附属病院の腎センターでVA管理の中心を担っている白髪技士といっしょに、実際にベットサイドにて実際にデータを入力しながら、改善点を洗い出すといった地道な作業を重ねた結果、非常に使いやすいシステムの構築が可能となりました。学会会場からも非常にいい反応があり、実際にそのシステムが完成したら、使用させていただきたいとの声もいただきました。ますます、この研究を発展させていく必要性を強く感じました。
なお、今回、この管理システムに関する意見をいただくためにiPadを会場に持ち込んでいました。しかし、カバーがないと長時間持って歩くのが辛かったため、急遽名古屋駅前のビックカメラにて、iPad用のケースを購入しました。
このケースは、今後臨床現場でiPadを使用する際に、威力を発揮してくれるものと期待しております。
次に、「穿刺針の脱血特性推定式を用いたVA狭窄診断法の確立」について発表しました。
この研究は、以前このブログでも紹介したように、2年目の白髪君が中心となって研究を進めてくれているテーマについての発表です。この研究では、透析モニタHD02を用いることにより、設定血流量に対する実血流量の推移を調べるとともに、事前に調べている穿刺針の脱血特性推定式を用いることにより、脱血不良の原因が、使用している穿刺針の太さに対して設定血流量が多すぎるのか、それともアクセス流量の低下によるものかを鑑別することができるようにしたものです。
アクセス流量の測定は、HD02を用いて直接測定することができますが、脱血、返血回路を逆接続して測定する必要があり操作が煩雑であること、また、日本で最も普及しているAVF(自己静脈内シャント)では分枝が多く、正確なアクセス流量を評価することが難しいことなどの問題点があります。
このような問題に対して、今回の研究は簡単に測定できる実血流量をもとに、アクセス流量の低下を推測するものであり、臨床応用が比較的スムーズになることが期待されます。
日本透析医学会の「慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」のなかで、 バスキュラーアクセス(VA)への狭窄治療条件を満たす症例を検出するために本方法を適応したところ、設定血流量300ml/minの条件下にて、Cutoff point-30m/minにて、末梢側狭窄症例を、感度= 88.9 %、特異度=80.0%の成績で検出することが可能になることが分かりました。
最後に、ワークショップにて「VA機能不全検出プログラムにおけるクリアランスギャップの有用性と課題」という発表を行いました。
この発表では、我々がこれまで提唱してきた透析量の質的管理法「CL-Gap」と、今回一般演題で発表した脱血特性評価法を組み合わせることにより、VAトラブルに対するモニタリングサーベイランスプログラムを確立していこうといった内容です。
このような発表をもとに、VAトラブルを早期に発見し、閉塞することなく、適切な時期にPTAを施行できる環境を作っていきたいと考えております。
(文責:小野)