小野研13期生、卒業、おめでとう。

2023/3/21に行われました令和4年度卒業式にて、小野研13期生のみんなが無事に卒業することができました。

コロナウィルス感染により、新歓やお花見、忘年会などの研究室でのイベントも行うことができず、やや寂しい気持ちでしたが、13期生は全員が第一希望として小野研を選んで入ってきてくれました。

ただ、仲の良い学生同士で一緒に研究したいという動機ではなく、研究内容をみて興味をもって来てくれたとのことで、大変うれしい気持ちになったことを思い出します。また、小野研は代々、男臭いイメージがありましたが、13期生は男子5名、女子3名といいバランスでした。

コロナ感染の状況にも影響を受けるが、全員の学生が積極的に学会発表をしたいという希望を聞き、日本透析機能評価研究会(埼玉/web)、日本透析クリアランスギャップ研究会(京都)、第12回中四国臨床工学会(岡山)での発表を標準に、研究活動を行ってきました。

研究班は大きくわけて、シングルニードル班と回路内圧班の2つに分けて活動をしてきました。


■ シングルニードル班

・ピストンポンプ式シングルニードル透析における電磁弁駆動タイミングの最適化と実質有効血流量からみた最適駆動条件の検討

(担当:山下 里佳, 林 凌平)

我々の研究室で考案し、特許を出願しているピストンポンプシングルニードル透析の流路制御電磁弁の開閉タイミングの最適化を行い、牛血液実験にて吐出特性を評価しました。

その結果、電磁弁の開閉タイミングは電磁弁の駆動信号から若干の遅延時間があること、さらに、電磁弁の開放タイミングは、ピストンポンプの動作により回路内圧が変化した後に作動しないと逆流が発生することが明らかになりました。この結果にもとづき、電磁弁の駆動タイミングを最適化させ動作させたところ、牛血液実験下にて、ピストンポンプ駆動容量 70mL、脱:送血比 6:4 、駆動回数15 回/minの条件下にて、最大有効血流量204.0 ml/minを得ることを報告しました。

  • 林凌平, 山下里佳,小笠原康夫,小野淳一: ピストンポンプシングルニードル透析(PP-SND)における電磁弁駆動タイミングの最適化.第12回中四国臨床工学会,2022.10.2 (岡山)
  • 山下里佳,林凌平,小笠原康夫,小野淳一:ピストンポンプシングルニードル透析における有効血流量の最適化を目的とした駆動条件の評価. 第12回中四国臨床工学会,2022.10.2 (岡山)

・シングルニードル透析の透析効率の定量化を目的としたリアルタイム溶質濃度評価法の検討

(担当:佐藤 悠人,鳥谷 和輝)

ローラーポンプシングルニードル透析(RP-SND)は、従来の透析法より著しく透析効率が低く、普及していない。我々の研究室では、RP-SNDにおける透析効率の低下原因を明らかにすることを目的に、VitB2濃度センサを用いたリアルタイム濃度センサを開発し、その有用性を報告した。センサならびに制御用マイクロコントローラの性能限界により、時間・濃度分解能に問題があった。このため、12bit AD変換器ならびにDA変換器を新たに導入し、リアルタイムかつ高精度にVitB2濃度の計測が可能となった。

さらに、VitB2濃度計測に使用した波長は375nmとヘモグロビンによる影響を大きく受けるため、血液実験では使用できない。そこで、本研究では、血液実験にて使用できるリアルタイム濃度センサとして、インジゴカルミン(IDC)を用いたリアルタイム濃度センサを開発した。時間分解能の向上を目指し、LED光量の増加と時間応答性に優れるセンサを導入することにより、優れた性能のIDC濃度センサを開発することを報告した。

  • 鳥谷 和輝 , 富坂 遥人 , 佐藤 悠人小笠原 康夫 , 小野 淳一:ローラーポンプシングルニードル透析におけるリアルタイム クリアランス評価を目的としたインジゴカルミン濃度センサの開発.第8回日本透析機能評価研究会,2022.07.10(川越:Web)
  • 佐藤悠人, 鳥谷和輝, 小笠原康夫,小野淳一: リアルタイムクリアランス評価を目的としたビタミンB2濃度測定センサの 開発と精度の向上.第12回中四国臨床工学会,2022.10.2 (岡山)
  • 鳥谷 和輝 , 佐藤 悠人, 小笠原 康夫 , 小野 淳一: ローラーポンプシングルニードル透析 における透析効率評価を目的とした インジゴカルミン濃度センサの時間分解能向上.第12回中四国臨床工学会,2022.10.2 (岡山)

■回路内圧班

・透析回路内圧を用いた新たな実血流量推定法の考案と回路内流路異常の検知への応用

(担当:谷口 葵,松本 萌那)

我々の研究室では、ローラーポンプの設定血流量と実際に吐出される実血流量は、脱血不良が発生しない限り一致すること、また、回路内圧と実血流量は相関するという作業仮説をもとに、あらたな実血流量推定法を考案し、その妥当性を報告するとともに特許出願を行った。

さらに、この手法でフィルター前後の圧較差からフィルター流量(eFF)、返血圧から返血流量(eFV)を算出し、その推移を観察することにより、実血流量の変化(脱血不良)と抜針ならびに回路凝血などの流路異常を検知できる可能性を報告した。

  • 谷口 葵, 松本 萌那, 小笠原 康夫, 小野 淳一:ローラーポンプ吐出特性と フィルター圧較差を用いた 実血流量推定法の開発.2022.07.10, 第8回日本透析機能評価研究会(埼玉:web)
  • 松本萌那, 谷口葵, 小笠原康夫, 小野淳一:ローラーポンプ吐出特性と静脈チャンバー内圧を用いた実血流量推定法の開発,第16回日本透析クリアランスギャップ研究会学術集会.2022.8.20, (京都)
  • 松本萌那,谷口葵,樋本渚生,近藤俊平,小笠原康夫,小野淳一: 推定フィルター流量と推定返血流量を用いた抜針検知法の開発.第12回中四国臨床工学会,2022.10.2 (岡山)
  • 谷口 葵, 松本 萌那, 白髪 裕二郎, 小笠原 康夫, 小野 淳一: 推定フィルター流量と推定返血流量を用いた透析回路異常検知法の考案.第12回中四国臨床工学会,2022.10.2 (岡山)

新しく作成した抜針再現モデルを用いた静脈圧監視法の問題明確化とPWSの有用性の検討

(担当:樋本 渚生, 近藤 俊平)

近年,透析患者の高齢化に伴い抜針事故の発生リスクが高まっている.このため,抜針トラブルを迅速かつ適切に検知できる新しい抜針検知法の開発が急務である.今年度はVA血管の模擬と抜針検知センサを配備した抜針再現モデルを新たに開発し、従来から用いられている静脈圧監視による抜針検知法の問題点について検討を行った。

その結果、静脈圧監視による抜針検知法では,血管内圧が低い場合には,抜針を適切に検知できないこと、さらに、深い血管に返血針を留置している場合、抜針時に皮下出血が発生している時点では抜針の検知が困難である可能性を報告した。


この問題に対して、透析回路の静脈圧波形の傾き(Pressure Waveforme Slope:PWSを用いることにより、抜針を鋭敏に検知することができ、皮下出血が発生した直後にPWSの低下が確認できることを報告した。

  • 近藤 俊平、樋本 渚生、小笠原 康夫、小野 淳一:抜針事故の検知を目的とした静脈圧監視法の問題点について.2022.07.10, 第8回日本透析機能評価研究会(川越:web)
  • 樋本 渚生、近藤 俊平、小笠原 康夫、小野 淳一:抜針トラブル検知法の評価を目的とした抜針再現モデルの開発,第16回日本透析クリアランスギャップ研究会学術集会.2022.8.20,(京都)
  • 近藤俊平, 樋本渚生,小笠原康夫,小野淳一:抜針事故の検知を目的とした静脈圧監視法の出血量から見た問題点.第12回中四国臨床工学会,2022.10.2 (岡山)
  • 樋本 渚生、近藤 俊平、小笠原 康夫、小野 淳一:PWSを用いた新たな抜針検知法について.第12回中四国臨床工学会,2022.10.2 (岡山)

小野研13期生のみんなは、研究活動を通じて、本当に仲良くなり、多くの研究成果を発表することができました。また、その後の国試対策についても、研究室のメンバー一丸となり学内模試等の結果を分析し、研究室内の2つのグループに分かれて、お互いに質問や教え合いながら、試験対策を行った結果、全員が臨床工学技士国家試験に合格することができました。

卒業後は、全国に飛び立つわけですが、この小野研究室での1年半で学んだことを胸に、患者さんから、周りのスタッフから頼りにされる臨床工学技士になることを祈っています。
また、学会やOB会でお会いし、皆さんの成長した姿をみることを一番の楽しみにしています。

2023/3/31 小野淳一

(Visited 227 times, 1 visits today)

ページ上部へ戻る