CL-Gapの理論と実際

Vascular Access(VA)狭窄は,VA閉塞に陥る危険性が高くなるだけでなく, VA血流量の低下などの血行動態的異常をきたし,結果として,実血流量の低下や再循環の発生による透析効率の低下を招く.このため, 日々の透析治療においてVA狭窄をモニタリングし,適切なタイミングに治療を行うことは,透析医療者にとって非常に重要な課題である.

現在,活用されている VAモニタリング(サーベイランス)として,1,形態評価や2.血行動態評価として,エコー検査が注目を浴びている.その一方で,多くの患者さんに対して,定期的に全員に対するエコー検査を実施することは現実的ではない.このため,現実的には, VAの理学所見等のモニタリング項目により VA機能異常を疑う患者さんに対して,エコー検査を実施されていることが多い.

しかし, VA理学所見は,透析スタッフの技能レベルの差によって大きく異ることや,脱血不良を感知するピロー部分は,脱血圧が大きく陰圧にならないとその虚脱を判断できないことが知られている.

そこで,我々は透析前後の BUN濃度の変化から算出される 標準化透析量(Kt/V)より,生体で有効に働いたクリアランス「有効クリアランス」と,ダイアライザーの性能から理論的に検出される「理論的クリアランス」の差をみることにより, VA機能不全による透析効率の低下を検出することができるのではないか?と考え,この指標を,透析量の質的管理法「 CL-gap:クリアランスギャップ」と命名し,その有用性について報告してきた.    

この CL-Gapは, VA機能不全がない場合には,有効クリアランス:eCLと理論的クリアランス:tCLはほぼ等しく, CL-Gapはゼロに近くなる.これに対して,VA機能不全により有効クリアランス:eCLが低下すると, 理論的クリアランス:tCLよりも低下し, CL-Gapは上昇する.このように,透析前後の BUN濃度からVA機能評価が行えることは月に1回から2回実施される定期採血から VA機能評価を行うことができることを意味し,その臨床的有用性は高いと考える.

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