研究テーマ:バスキュラーアクセス管理
バスキュラーアクセス(VA)は非生理的な血行動態の上に成り立つため、急激な乱流発生や反復する穿刺作業に伴い生じる内膜肥厚や血栓形成によりしだいに狭窄が進行し、閉塞のリスクが高まる。このため、VA狭窄を早期に発見し、適切な時期にPTA等の外科的処置にて修復することが望まれる。日本透析医学会の「2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」1)では、VA 狭窄の治療条件として、狭窄率50%以上であり、血流の低下,瘤の形成、静脈圧の上昇、BUN の異常高値、再循環率の上昇、予測できぬ透析量の低下、異常な身体所見など、臨床的医学的異常が一つ以上認められることと定義している。このうち、BUNの異常高値、再循環率の上昇、予測できぬ透析量の低下、異常な身体所見は、VA機能低下に伴う透析効率の低下により尿毒素の蓄積とそれに伴う尿毒症症状と考えることができる。したがって、VA狭窄に対する治療条件は、VA狭窄に伴う血行動態的異常から透析効率の低下をきたし、本来のVAが有すべき機能である十分な透析を行うために必要な血流量を確保することができなくなった状態と解釈することができよう。このように、VAの機能と透析効率は密接な関係があるが、透析効率の変化から直接VA機能不全を検出することは難しい。
研究テーマ1.穿刺針の脱血特性の定量化
2010年 牛血実験における透析穿刺針の脱血特性(1期生:白髪)
2011年 カニューレ針の脱返血特性と個々の影響因子との関連性(2期生:仁科)
2013年 牛血液粘度を模擬できるグリセリン溶液の実験条件の確立(4期生:普家)
研究テーマ2.脱血不良に伴う実血流量低下のモニタリング方法の確立
2010年 脱血不良時における実血流量と回路内圧の関係(1期生:井脇)
2011年 新しい脱血不良感知機能の開発に関する基礎的研究(2期生:大森)
研究テーマ3.一時留置型カテーテルの脱血特性の定量化と留置位置の関係
2011年 石井 グリセリン溶液を用いた一時留置型カテーテルの脱返血特性の評価
研究テーマ4. VA管理を目的としたVA管理データベースの開発
2012年 VA機能不全の早期発見・治療を目的とした VA管理データベースの開発(3期生:川口)