この度,日本医療研究開発機構(AMED)の「令和2年度 橋渡し研究戦略的推進プログラム(シーズA)」に、当研究室の研究課題が採択されました.
シーズA47「AI技術を用いた血液透析治療時の抜針検知システムの開発」
研究期間:2020年4月1日〜2021年3月31日
透析患者の高齢化に伴い,合併症の増加や認知機能の低下などの問題が生じ,透析治療中の重篤な抜針事故は増加しています.その一方,透析医療費の抑制により,少ない透析スタッフにより多くの透析患者を治療する必要があります.このような抜針事故は大量出血に伴う死亡事故に直結するため,その対応は急務です.しかし,現在採用されている透析回路静脈圧平均値のモニタリングでは,抜針事故を適切に検知することは困難な状況です.
我々は透析回路内圧波形を詳しく解析したところ,脱血不良状態の影響を受けず抜針を検知できる指標として,静脈圧波形の振幅成分や傾きが有用であることを見出しました.しかし,これらの指標も血液粘性度や回路凝血,ローラーポンプチューブの劣化等の影響を受けるため,単一指標のモニタリングによる異常検知には限界があることが確認されました.また,透析ローラーポンプの吐出特性の数理モデルを構築し,回路内圧波形から実血流量を推定する新たな手法を考案しました.
本研究課題では,透析回路圧力波形解析とAI技術を組み合わせることにより,多数の因子間の影響を考慮した上で透析治療中の実血流量,血液粘性度,回路抵抗値のリアルタイム推定を行い,抜針事故を検知するシステムを開発することを目的としています.
この研究を通じて、安全に透析治療を受けれる環境を確立し、長時間透析やICU等での持続緩徐式血液浄化法、また、在宅血液透析への発展に貢献したいと考えております。