川崎医療福祉大学臨床工学科の小野ゼミを担当しています小野です。
2012月2月19日に高知のサザンシティホテルで開催された第38回高知県透析研究会にて、特別講演で発表させていただく機会をいただきました。参加人数は263名と、高知の透析スタッフの熱意が非常に強く伝わってくる会場でした。
講演内容は、「バスキュラーアクセス機能不全検出プログラムにおけるクリアランスギャップ(CL-Gap)の有用性と課題について」というテーマで約60分の発表でした。
バスキュラーアクセス機能不全検出プログラムにおけるクリアランスギャップ(CL-Gap)の有用性と課題について
川崎医科大学附属病院MEセンター
川崎医療福祉大学臨床工学科
○小野淳一
日本透析医学会の「慢性血液透析用バスキュラーアクセス(VA)の作成および修復に関するガイドライン」では、VAへの狭窄治療条件として,狭窄率50%以上で,血流量低下や瘤の形成、静脈圧の上昇やBUNの異常高値、予測できない透析量の低下、異常な身体所見などの臨床的/医学的異常が1つ以上認められることと定義されている。しかし、狭窄率や血流量の評価には専用装置が必要となるため、頻繁に評価することは困難である。一方、我々はこれまで、標準化透析量:Kt/Vから推定した有効BUNクリアランス値と、総括物質移動係数から算出されるBUNクリアランス理論値を比較し、その格差(ギャップ)を求めるCL-Gapを提唱してきた。 そこで、我々はVA狭窄に対する治療条件として、CL-Gapの有用性を検討したので報告する。
VA狭窄に対するPTAを施行した27名、66回を対象に、PTA施行前10週間にわたり、透析中の静脈圧(VP)、透析前BUN濃度、Kt/V、CL-Gapの4つパラメータの推移を調査した。その結果、CL-GapはPTA6週間前から有意に上昇し、その他のパラメータよりもVA狭窄に伴う透析量の低下を早期に検出できることが判明した。したがって、CL-Gapを経時的に評価することにより、BUNの異常高値や異常な身体所見に陥ることなく、VA狭窄への治療介入を可能となることが期待できる。
しかし、その一方で、CL-Gapは透析終了後の採血手技を統一化する必要があること、患者体格、Dry Weightの設定の違いによる体液量推定式などの誤差要因に影響を受けること、さらには、設定血流量に対して穿刺針の不適切な選択などバスキュラーアクセストラブル以外の影響も受けることが確認されつつある。このため、現在我々は、CL-Gapの課題を補完するサーベイランス検査法として、透析モニタHD02を用いたVA脱返血特性の定量化法についても検討中である。本発表では、日常的に実践できるVA機能不全の検出プログラムの確立に向けて、CL-Gapの果たしうる役割ついて考察していきたい。
発表内容は、私が1998年に開発した透析量の質的管理法「CL-Gap」を中心に、透析患者さんの命綱であるバスキュラーアクセスの機能不全を検出するモニタリング・サーベイランスプログラムに組み込むために、バスキュラーアクセスの理学的所見であるシャントトラブルスコアリングシートや透析モニタリングHD02とごのような違いがあるか、また、臨床現場で広く受け入れられるためには、どのようなプログラムを構築するべきかについて、発表しました。
数式や理論的な話が多く、聞く方にはかなり大変な内容だったと思いますが、会場にいらっしゃた参加者の方々は、非常に熱心に聞いてくださり、私自身は非常に充実した発表となりました。
今年の12月1日、2日に高知で開催されます第7回クリアランスギャップ研究会に多くの人が参加したいと思えるような発表になったかすこし不安でしたが、私自身、VA機能不全とモニタリング・サーベイランスについて、いろいろ考えることができたので、非常にいい機会をいただいたと思っております。
今回の知識をもとに、今後、CL-Gapとその他の指標を組み合わせ、多くの臨床現場で活用されるプログラムの構築を目指したいと考えております。
今回、講演の機会を与えて頂きました、近森病院泌尿器科主任部長の谷村正信先生ならびに高知高須病院院長の湯浅健司先生をはじめ、関係各位に厚く感謝を申し上げます。
(小野淳一)
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